2016.03.23

藍色のシャツを他の衣類と一緒に洗濯し、色むらが発生

二年前に退職をしてからというもの、夢に迄見た専業主婦を謳歌している六十四歳の私です。数ある家事の中でも特に好きなのが洗濯です。どんどんしてしまいます。洗って干して畳む迄、全ての行程が好きなのです。そんな私ですが、少し前迄は家でもまるで仕事の延長のようでした。一日にすべき事は時間配分まで決め、それも早め早めに済ませなければ心が落ち着かないのです。

今日は洗濯の日だと思うと朝の5時から回したくなる衝動に駆られます。夜のメニューが決まれば午前中にだって作ってしまいたくなるのです。何ともゆとりのない窮屈な日々を送っていました。そんな私に呆れたのでしょうか。見かねた夫が「今迄精一杯働いてきたんだから、これからは少しのんびりしては?」と言って来ました。その言葉でやっと何かから解放された気持ちになり、洗濯も料理も心から楽しんで出来るようになったのです。

息子が同居していた頃は週に5回は洗濯機を回していましたが、夫と二人になった今は2回程に減りました。共働きをしていた頃は、夫もよく手伝ってくれていましたが、今や私の独壇場となったのです。もう以前のように多少洗濯物が溜まっていようと気になら無くなりました。むしろ洗濯物がいつも干して有った頃より、片付いている今の方がスッキリとしていい感じとさえ思えるようになっていました。

大きな籐の籠が我が家の洗濯物入れです。その横には洗剤等の入った、これ又小さめの籐の籠が置いてあります。洗剤は浮気心を起こさずにNANOXが定番です。柔軟剤の方は新製品が出される度に目移りがして節操のない使い方をしています。それらが並んだ棚の下に我が家の伝統の二槽式洗濯機がドンと置かれています。今や全自動に押されて家電量販店でも殆ど展示されていませんが、何とか探し出して今も二槽式を使っています。

この空間こそが私の活躍の場所なのですが、二層式に特別な拘りが有る訳でも無いのです。子供が幼い頃大量の洗濯物を全自動で何度も回すより、一度に済ませたいという時短が狙いでした。それが夫婦だけになって洗濯の量も減ったのですが、慣れからか今に至る迄ずっと二槽式となった訳です。この二層式の良い所は回している途中でも追加が可能だと言う事でしょう。後から気付いたあれもこれも放り込みが出来ると言う訳です。如何にも乱暴でスピード命の私には格好のアイテムだったのです。

しかし、これが災いの元でした。普段から家庭で洗える物は積極的に自分で洗うようにしていました。手洗い等、多少手間のかかる物でもお洒落着洗いのエマールで洗っていたのです。勿論、洗う前には必ず自宅で洗えるかタグを見て確認していました。

それがあの日に限ってどうした訳か、何の躊躇も無く洗ってはいけない私の藍色のシャツを例の如く放り込んでしまったのです。ブザーの音で、さぁ脱水槽に移しましょと覗いた途端思わず「ひゃーッ」と声を出してしまいました。洗濯物が青色の水の中に浸かっていたのです。

当のシャツは仕方が無いにせよ、被害を被った罪なき洗濯物は見るも無残に青ざめています。所々に色移りをしている様を見て、昔流行ったむら染めを思い出しました。白色の下着類は最初のグループでしたので難を免れましたが、被害者の中には気に入っていたTシャツや綿のワンピースも入っていました。夫のカラーシャツ等は色の移り具合が妙にワイルド仕様に仕上がっています。

さすがにこの夫のカラーシャツは処分する事にしました。私のTシャツとワンピースは丁度我が家に有った染料(ベストカラー・藍色)を使ってむら染めに挑戦してみました。

結果は笑ってしまう仕上がりでした。染料は以前白地のシャツを水色にしたくて求めたものでした。今回は白地でも無く、まして染める前からムラムラだった事も有り、アバンギャルドな部屋着仕様となったのです。この出来事があってから途中の放り込みは禁止、そして何をするにも焦らない、この事を肝に銘じた私です。